なぜ注目される?今さら聞けない雇用統計の基本を解説

今さら聞けない雇用統計の基本をわかりやすく解説

FX侍です、こんにちは。

突然ですが…
アメリカの雇用統計ってどういう経済指標で
どうして注目度が高いのか…説明できますか?

え〜っと、働く人の増減からアメリカの経済状況が分かるから…みたいなヤツっしょ( ´▽`)

という漠然としたイメージの方も多いはずですw

というわけで今回は「そもそも雇用統計とは?」という基本的な部分と、「なぜ雇用統計が注目されるのか?」といった裏側を解説しました。

ファンダメンタルとか難しいんで…(*´Д`*)
という人でもトレードする以上は雇用統計のさわりは知っておかないとダメですよ。

そもそも雇用統計とは?

雇用統計(nonfarm payroll)は、以下のようなものです。

発表時間 毎月第1金曜日 夏時間:21時30分 冬時間:22時30分
発表内容 非農業部門雇用者数
失業率
平均時給

労働参加率
週労働時間
建設業就業者数
製造業就業者数
金融機関就業者数 など10数項目の内容に渡る
発表機関 アメリカ労働省労働統計局(BLS)
調査対象 約6万世帯への家計調査
約12万の企業・政府機関、約66万の個人事業主

なお、最新の雇用統計のデータは以下のリンク先で閲覧できます。
(参考)Employment Situation|U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS

 

調査対象の項目でも分かるように「家計調査」と「事業所調査(対企業や政府機関)」の2つの側面からアプローチしているのが雇用統計の面白いところですね。

家計調査ではサンプルとして選ばれた家庭に電話がかかってきて、「今は定職に就いてる?」「無職なら働く気はある?」と質問をされるそうです。(自動で音声が流れるようなものだと思います)

そんな家計調査によって失業率や労働参加率の数字が計算されます。

 

では次に、雇用統計で注目されやすい太字で示した3つを解説します。

非農業部門雇用者数

これが雇用統計の大々的なトピックとして注目される事が多いですね。
自営業者と農業以外分野で、公的機関や民間企業に雇用された人数の増減を先月比で表す数字です。

予測値とのズレや先月比の数字、流れの中での変化が注目されます。

予測値を大幅に上回ればポジティブサプライズとなって強烈なドル買いになることもありますが、よくよく中身を精査すると増えたのは正社員よりパートタイムの割合が高い…などで後に失速といったケースもあります。

発表される数字にも注目が集まりますが、同様に内訳も重要です。
(もちろん非農業部門雇用者数だけでなく失業率や平均時給など複合的に判断されます)

失業率

16歳以上の働く意思があるけど失業している人の割合です。

単純に失業率が増えればドルにとって悪材料、失業率が低下すればドルにとって好材料となります。

ただアメリカの労働力には定義があって、仕事を積極的に探している事が条件となります。
要するに働く気がない人は労働力と見られないので、失業率にカウントされないんですね。

ということは、景気が悪く就職先を見つけるのが大変だから「もうニートでいいや」って人が増えると見かけ上の失業率は低下するってことですw

景気のサイクルによっては失業率の精査も必要となりますね。

 

ちなみにBLSのサイトでは下記のように失業率の推移が公開されています。
 
アメリカの失業率グラフ
(出典)Civilian unemployment rate|U.S. BUREAU OF LABOR STATISTICS

ここで注目すべきはグラフ上部の判例です。

上記はTotalしか表示していませんが、性別、年齢別、人種別の推移も見れるんです。
人種別に見てみると移民国家アメリカの内情に少しだけ触れられますよ。

平均時給

主要産業部門での平均時給の増減を示す数字で、人件費の増減が把握できます。
(ちなみに平均時給そのものの数字もわかります)

単純に平均時給が増えればドルにとって好材料、平均時給が低下すればドルにとって悪材料となります。

時給が上昇していれば給料が増えるので、消費行動に繋がりアメリカ経済にとってプラスとなります。
そして賃金はインフレにも関係するので意外と注目される指標なんです。

 

雇用統計が注目される3つの理由

雇用統計が注目される理由は、休日前の金曜の夜にYoutubeで盛り上がりやすいからではありませんw

理由の1つは、FRBも注目する指標という点です。

FRBは物価の安定と雇用の最大化が重要な役割であり、労働市場は物価とも密接に関わっています。
(例:人手不足→賃金上昇→インフレ圧力が高まる、その逆もあり)

つまり国の金融政策を考える上で、労働環境は見逃せない指標というわけです。

当然ながら政策金利にも影響を与える要因なので、下記も併せてチェックしておくといいですよ。

つい忘れがちですが、アメリカは日本と違って終身雇用の国ではありません。
(日本でも終身雇用が少しずつ崩壊している感はありますが)

景気や会社の業績に伴って従業員をサラッと解雇する風習があるので、労働環境を気にしなければいけないという背景はありそうです。

この辺りは日本人とは感覚が違うでしょうね。

リストラのイメージ

 

もう1つの理由は、アメリカが個人消費で成り立っているという点です。

アメリカはGDPの約70%が個人消費で成り立っているという特徴があります。
(個人消費の対GDP比は2024年3月で67.6%)

GDPランキング順で個人消費の対GDP比は、中国:38.2%、ドイツ:49.3%、日本:53.6%です。

雇用される人が増えれば景気も拡大し、個人消費も増えてアメリカ経済にプラス、という単純な図式ですね。
(反対に景気が悪くなれば労働環境が冷え込むので景気後退を察知する意味にもなります)

要はアメリカ経済に直結する個人消費の源泉(=個人の所得)を推し量るのに雇用統計に注目が集まるというわけですね。

ショッピングのイメージ

ちなみにアメリカ人はクレジットカードでガンガン消費する国民性なんだそうです。

そもそも治安の問題で現金を持ち歩くのが危険なので、クレジットカード普及率が日本とは段違いで高く、基本的に買い物はカード払いが多いとのこと。(日本に来た外国人がそこら中にある自動販売機に驚くのと同じ理由ですね)

こうした側面からクレジットカード関連の数字からもアメリカ経済を占うことはできます。

またこれは私個人の推測ですが、マニフェストデスティニーに代表される拡大路線がアメリカ国民の根底にあるので、ガンガン消費しようぜ!という消費マインドが備わっているのかな〜とも思います。

 

理由の3つ目は、公表される内容が多岐に渡るという点です。

下記は雇用統計後にBLSから公表されるデータの1つです。(クリックで拡大します)

雇用統計で公表されるデータ

雇用者数の変化が業種別でわかりますし、労働時間や賃金もわかります。

一見するとチンプンカンプンですが、プロはこれを読み解いてアメリカ経済の現状や先行きを分析するんです。
(もちろん雇用統計だけじゃなく他の経済指標の中身とあわせて総合的に分析します)

例えば簡単なところで言えば…
運送業の人手で景気分析もできますし、平均時給の推移で労働市場の需給分析もできます。

さまざまな種類の数字の変化が追える
  ↓
相場を動かす人たちの判断材料として使われる
  ↓
注目度が高くなる

という図式ですね。

 

まとめ

このページでざっと読んだだけでは理解できないかもしれませんが、重要なのは「市場が注目する指標である」との認識です。

昔に比べて雇用統計発表後の値動きは大人しくなってはいますが、市場のテーマが合致した時やサプライズがあった時の破壊力は今でも健在です。

無警戒でポジションが無くなっちゃった…ではトレーダー失格ですからね。

FX侍塾の講師N氏のようにファンダメンタルにも精通した人であれば、雇用統計を先読みして稼ぐこともできますが、ファンダに明るくない方は様子見が賢明です。

雇用統計の数時間前にはノーポジが理想です。

たまーに第1金曜じゃないこともありますが、月初の金曜は要注意とまずは覚えておきましょう( ・∇・)

 

そしてもうワンステップ進むのであれば、先月からの変化に注目です。

さらに市場テーマや他の指標との関係も見ながら…という視点で雇用統計を見るとレベルが上がっていきます。

いや〜ファンダメンタルはちょっと…ね…
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